◆ #01

京都の路地・町家を
快適に住みやすく

MORISHIGE / Lab

森重研究室

森重研究室では、古民家や路地の現代的価値を考察することにはじまり、ストックの継承と活用のためのマネジメントについて研究します。実際にまちなかを探訪し、京町家特有の造りや景観条例の影響、まちの課題について調査・議論します。
社会の仕組みや都市空間の変化を肌で感じ、徹底的に自身のテーマを深掘りしたうえで卒業研究に取り組んでいきます。

◆ Research Content 01

京都の路地や町家などの住空間の実態と課題、解決策を考えるのが森重先生の研究テーマ。
特に着目しているのは子育て世帯の路地空間の使い方だ。「狭い」、「非常時に避難しづらい」。路地にはそんなネガティブなイメージもあるけれど、プライベートとパブリックの中間地点というポジティブな側面もある。例えば、クルマが通らないので小さな子どもにとって安全。家同士の出入り口が近いため人の目が行き届き、子育てで親が孤立しにくい。
この数年でいうと、コロナ禍でなかなか外出できない時、目の前の屋外空間として貴重な癒しになるという新たな気づきもあった。

一方で、路地に面した家に住み続けたくても法律上建て替えや改修ができないという課題も。法律のどこに問題があり、どこが変われば住み続けられるのかを考える必要がある。研究対象は古い住空間でありながら、先生が見つめるのは、あくまでも現代の住まいとしての路地や町家。
現代社会でいかに使いこなしていくかを日々検証している。

先生の自宅も町家に囲まれた“うなぎの寝床”の狭い敷地に建っている。もちろん、設計は先生自身によるもの。町家に倣った外観や風通しの良い構造と、デザイン性や機能性がちょうどいい塩梅でミックスされている。「古いものに学び、古いものをどう使うかを考えつつ、設計者としてデザインの美しさには責任をもちたい。学生にもその考え方は大事にしてほしいですね」。
町家のリノベーションにおいても「伝統的なスタイルを踏襲しながらも、オリジナルに戻すわけではない」というのが先生のポリシー。だからこそ、新築にはない“予想外”が生まれるのがリノベーションの面白さだ。上手なリノベーションは、その“予想外”が余裕となり、現代の生活に合った付加価値となる。時代とともにアップデートされてきた住空間の使い方。紡がれてきた物語の数が増えるほどに、その場所にしかない魅力となっていく。

◆ Research Content 02

森重研究室は学生が自らのやりたいことを追究するというスタンス。卒業研究のテーマも自由だ。ただし、いきなり設計に入るのではなく、その手前で立ち止まり、研究対象とその周辺の状況、社会で起きていることを徹底的に考える。そのひとつとして行うのが、路地歩きのフィールドワーク。これまでは気が付かず通り過ぎていたような路地にも目をこらす。

京町家特有の造りや景観条例がどう反映されているか、ここは法的には道路なのかそうではないのか。発見したものの数を数えたり、先生の知り合いが改修を手がけた長屋を見学したり。現場でしか体験できない学びがそこにある。「研究対象としている建築物が今どういう状態におかれているかを客観的に見られるリサーチ力を身につけてほしいです」と話す先生。
与えられた課題を瞬発的に返していくのではなく、地に足のついた設計、仕事ができるようになってほしいという願いがその言葉に込められている。

Sachiko Morishige

森重 幸子 教授

Profile

博士(工学)・一級建築士。
京都大学工学部建築学科卒業、同大学院工学研究科修了。
(株)設計組織アモルフ、設計事務所主宰、京都大学研究員、武庫川女子大学建築学科講師を経て現職。
京都市美観風致審議会委員等。
個人住宅、教会堂、集合住宅「平成の京町家東山八坂通(都市住宅学会業績賞他)」などの設計に携わるとともに、町家と路地に関する研究に取り組む。

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