こんにちは、建築学科講師、建築デザイン領域の人見将敏です。
私の研究室では主に建築設計や建築論(作家論)・近代建築史研究をテーマとして活動を行っています。今年度の在籍学生は6名で、最近のゼミでは卒業制作に向けた取り組みとして、それぞれの興味あるテーマに沿いながら調査・エスキスを重ねています。
〇前期のゼミ:ものごとの見方や考え方を身につけること
前期のゼミでは、卒業制作の個々の課題発見を行う前段階として、主に数冊の本を輪読(1冊の本をパートごとに分担し、それぞれの内容をまとめ・発表)しました。設計の取り組み方やものごとの考え方、建築作品の分析方法等を全員で再確認・共有すること、そして、その内容を自分たちの見方から議論することで、なるべく自身に引き付けて理解し、その後の設計や研究に結び付けてほしいと考えています。今年度扱ったものは、以下の2冊です。
坂牛卓著、『建築の設計力』、彰国社、2020年
ジェフリー・H・ベイカー著、富岡義人訳、『都市と建築の解剖学-形態分析によって「設計戦略」を読む』、鹿島出版会、1995年
そして全員で共通の本を精読・議論した後に、今度は、それぞれ興味のある本を1冊見つけてもらい、その内容について発表・議論する、ということを行いました。
本や図面は、精読する、その内容をちゃんと知ろうとすると、けっこう時間がかかります。さらにそれをメモしまとめようとすると、普段の何倍もの時間がかかります。ただそういったトレーニングをコツコツとしておくと、本を読み解くこと、作品を読み解くこと、他者の意見を理解すること、ひいては自身の考えや作品を客観的に見定め改善していくことが、だんだんスムーズに行えるようになっていきます。こういったことは社会に出てからはなかなか腰を据えてできないので、学生のうちになるべく行ってほしいと思っています。
学生によるレジュメの一例(レジュメ内の図版は、ジェフリー・H・ベイカー著、富岡義人訳:『都市と建築の解剖学-形態分析によって「設計戦略」を読む』、鹿島出版会、1995年より抜粋し学生が一部加工を行った。)
〇前期終盤~現在までのゼミ:「問い」を見つけること
前期終盤から現在までのゼミでは、卒業制作に向けてそれぞれに沿った進め方をしています。主軸となるテーマや、敷地の選定など、個々の学生の特徴に応じてスタートしていきました。ただしどの学生にも共通して求めるものは、何かに着目した後、それを広く浅くというよりは、深掘りし筋道を通して進めることでその先に広範な・普遍的な何かが見つかるようにしてほしいと考えています。卒業制作・研究では、当然、結果として良い設計・優れた研究報告ができればそれが一番ですが、ただそれよりも重要なことは、大学を卒業した後、建築と関係あるなし関わらず、それぞれの歩もうと決めた道の中で、自身に関わるずーっと考えていきたい「問い」を見つけられることなのではないかと思います。問いを設定し、それについて調べ答えを出し、さらにそこから生まれてくる新たなもしくは深さのある問いを見つけ、また調べ答えを出し問いを見つけ、という繰り返しの中で、10年後20年後の将来、彼ら彼女ら一人一人が社会に対し責任をもってその問いと答えを提示してくれたら、また何かに迷った際の道しるべとなったら、という思いで手助けをしています。
夏休み中もゼミを継続し、本当は、一人の学生の敷地を例に研究室の全員で調査を行い、敷地の見方などを伝えられればと思っていたのですが、緊急事態宣言の時期と重なり遠方から通う学生もいたため、安全を見て延期することにしました。そういったこともあり現在は、個々の事情に合わせオンラインと対面を併用してゼミを行っています。
コロナの状況次第ではありますが、2月末頃より、学生作品の一部(優秀作品)を学外の方も閲覧できるよう学内に展示する予定です。彼ら彼女らなりの「問い」をご覧頂ければと思っております。
(講師 人見将敏)