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建築学部

宮内研究室の紹介2022

宮内研究室の紹介です。

研究室のメンバー

本研究室は、建築家としての能力を、長い人生の中での基礎的なサバイバルスキルとしてとらえています。建築家としての観察力と創造力をもってすれば、人生でのいかなる難局も機会としてとらえて行くことができるはずです。キャリアプランニングのような目の前にある就職のようなステップの話ではなく、自分の人生をどのように生きていくかを柔軟に模索することが主眼となっています。ですので研究室では時折、自分の人生のプランニングについて口頭でプレゼンテーションを行っています。特に昨今は、ビジネスの世界でもデザインシンキングをベースとした人生とキャリアのイノベーションの話がよく聞かれますが、大学の4年間で建築教育を受けた人は、そのようなスキルと感覚を自然に身に着けているはずなのです。

あみだくじで席替えをよくやります

人生を豊かに、そしてこれからの激動の時代をたくましく生きていくためには、正直ざっくり言ってしまうと正攻法というよりもサバイバルスキルに近い感覚で、これからの生き方の展望を見据える必要があります。つまりは、建築家として時代の変化とともに柔軟に、新しいスキルを身に着けながら、そしてまるで時と共に新しく生まれ変わっていく感覚が必要になるに違いありません。それは考え方によっては、建築設計は技術を取り込みながら試行錯誤を繰り返す思考のプロセスなので、それを学んでいる私たちにとっては本来備わった能力であるはずなのです。

京都の東山を背景に

学生皆さんの長い人生の中で、現存する資本主義を基にした社会システムは、遅かれ早かれ似て非なるものに変容していくにちがいないです。もしお金の稼ぎ方、ものの作り方、食べ物のつくり方が、現在と全く異なるかたちになったとしたら、その時、「建築家として」どうやって生きていくことができるでしょうか?例えば、100年前の京都に建築家としてタイムスリップすることができたら、どのような建築家人生を送るでしょうか?同じような想像力で、これから100年先を展望し建築家としてこれからの未来を生きていくとするなら、どのように人生を創造するでしょうか?

関西大学環境都市工学部建築学科 木下光教授を招いて講評会

そしてこれまで以上に建築家としても、そして一個人としても、その感性や価値観、そしてデザイン・シンキングのようなコミュニケーション能力をベースとした共感力や、非認知能力を問われる時代になることは間違いありません。建築家はその職能と利他的精神をもって社会に貢献すべく、人々の住まい方や働き方を考えて建築を設計することが求められます。だけれども、もし社会の変化のスピードほうが速かったとしたら、ひょっとして建築家は時代に取り残されてしまうのではないだろうか、ふと思うことでしょう。だがそれ以上に肝心なのは、私たち建築家自身がどのように生きることで社会の一員として貢献できるか、まず我々建築家自身がどうあるべきか、どうしたいかをまず問い直す必要があり、今こそその素晴らしいチャンスが到来していると考えます。

発想法をベースとした積極的な意見交換を行う様子

このような革新的かつサバイバル的な視座において、本研究室はこれからの時代に向けての新たな建築家像を模索する活動を目指したいと考えています。よって「建築とは何か?」という哲学的な問いと同時に、「建築家とは誰か?」という実存的な問いをベースに、より具体的に、各研究生がこれからの建築家の可能性と生き方を再定義していく研究活動を目指します。例えば逆に、「そもそも施主とは誰なのか?」と問うだけでも、「あれっ、なんでそもそも施主からお金をもらわなくてはいけないのか?」というような根本的な問いが出てくると思います。よってこのように、社会に問う前にまず我々自身に問うだけでも、より主体的な建築家の在り方、引いては私たちの生き方や働き方まで再考することができると考えています。

デザインシンキングの手法でのスケッチモデル作りに取り組む様子

研究のベースとしては、予測から推測、イマジネーションから妄想にも近い領域で、思考実験を行っています。これまでの建築家というやや凝り固まった概念を解きほぐしながら、そもそも我々建築家自身がワクワクする人生を設計することを目的としています。デザイン思考やアート思考なども取り入れ、既成概念を突破していく術を持って、我々自身を驚かせることができるような型破りな建築家像そして建築を研究することを目指しています。またそのような主体的な建築家としての「自分探し」をベースに、卒業制作にあたっては自分の将来への延長線上にある、より具体的な建築作品を制作することを目的とします。自らが人生の設計者であり施主でもあるべきです。よって建築家にさらにオリジナルな特技や異なる分野、また思いもつかないことをいろいろ掛け合わせて、より多様で豊かに人生を生きるための研究を目指しています。

建築の要素のスケッチモデル

上記のようなデスカッションを挟みながらも、基本的な設計力を養うための活動ももちろん行います。KYOBIの学生は、比較的に建築設計における計画の部分の能力が高い傾向にあると思います。それは、基礎学年の設計課題が建築計画を重視していることもあり、また建築士の資格取得をベースとした建築教育の賜物でもあると思います。ですので、本研究室のアプローチとしては、あえて建築計画の部分に主眼はおいていません。その代わりに、建築の要素を分析し、その要素としてのエレメントをデザインシンキング的なアプローチで創案し、さらに開発していくことで、近代的な建築の在り方を建築の要素という内側から再考できるのではと考えています。これがどう上記のサバイバルスキルと繋がるかといえばピンとこないかもしれませんが、メタ認知的な発想法をもってすれば、もちろん建築そもそもの在り方も問いただすことができるであろうと期待しながら、研究室で実験しているところです。

准教授 宮内智久 

ある日の午後に作成したスケッチモデルと

研究室での参考文献:

・LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略 アンドリュー スコット , リンダ グラットン他
・カミング・バック・トゥ・ライフ―生命への回帰 つながりを取り戻すワークの手引き ジョアンナ・メイシー, モリー・ヤング・ブラウン
・繊細さは、これからの時代の強さですーとんでもなく生きづらい世の中でエンパスのパワーを発揮する! アニータ・ムアジャーニ
・デザイン思考が世界を変える ティム ブラウン
・実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決 ジャスパー・ウ
・突破するデザイン ロベルト・ベルガンティ
・新 クリエイティブ資本論―才能が経済と都市の主役となる リチャード・フロリダ
・フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか ダニエル ピンク
・幸福の「資本」論―あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」橘 玲
・10年後の仕事図鑑 堀江 貴文, 落合 陽一
・多動力 堀江貴文
・ハウ・トゥ アート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法 若宮 和男
・直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN 佐宗 邦威
・リサーチ・ドリブン・イノベーション 「問い」を起点にアイデアを探究する 安斎 勇樹
・ソーシャルデザイン実践ガイド―地域の課題を解決する7つのステップ 筧 裕介
・プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる 尾原 和啓
・アフターコロナのニュービジネス大全 新しい生活様式×世界15カ国の先進事例 原田 曜平
ほか

新海研究室の紹介2022
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