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建築学部

建築デザイン演習 Ⅰ(2年生)の建築設計課題について

みなさん、こんにちは。建築学科教員の岡北です。

1年間の大学のスケジュールが終盤に差しかかり、建築学科2年生の演習の建築デザイン課題では最終課題の「保育園」の講評会が終わりました。

保育園と聞くと、その場所で過ごしたことがなく、どういう建築なのかピンとこない方も、ぼんやりと当時を思い出す方も、いきいきとした思い出が強烈に浮かぶ方もいらっしゃると思います。

今日の社会生活において、保育園は家と社会をつなぐ非常に重要な場所として機能していますが、どういう建築が望ましいと思われますか?

設計する際には、保育園が国の認可を受けるために必要な条件をクリアした上で、そこで過ごすこどもたちの安全、健康、学習をサポートして、豊かな環境を提供し、さらには保育者たちの働きやすさにも配慮しなければなりません。また、こどもといっても、0歳児から5歳児まで身体も心も大きく異なりますし、また同年齢であっても、個々のこどもたちの発育の過程は様々です。

今回の課題では、各自の学生の提案するコンセプトに沿って、そうした諸条件を丁寧に検討して、統合させた保育園の設計を求めました。それぞれの年齢に応じた保育室、遊戯室、園庭だけでなく、そこにブックカフェを要求し、地域交流の拠点となることもテーマの一つとしました。なかなか手強い課題だったと思いますが、学生の皆さんは粘り強く考え続け、とても面白い提案を見せてくれました。

ここでは手短に2つの作品を紹介し、みなさんに大学での建築設計の授業の面白さをお伝えできればと思っています。

 


小笠原日向さん「タテのつながり:時は流れど、流されることなかれ」

手書きのパースと青が印象的ですね。                                  1/7

 

敷地周辺の歴史や環境をよく調べています。                                  2/7

 

こどもたちの1日の活動を時間別に追いかけて、建築とうまくリンクさせています。             3/7

 

吹き抜けや、屋内の遊び場や図書コーナーと多様な空間、そして屋上のとても楽しそうな園庭が魅力的です。  4/7

 

自分の考えを丁寧に伝えるために、言葉と図面とイメージをうまく組み合わせています。           5/7

 

CG表現が得意とする「光」を印象的に見せてくれています。                            6/7

 

こうしたCGは、TWINMOTIONというアプリを使いこなすことで実現できます。               7/7

小笠原さんの作品について岡北のコメント:

小笠原さんの提案は、まず敷地の歴史や背景を調べて、その場所を読み解くところから始めています。建築は土地と密接につながるモノなので、「どこに何が建てられるのか」はとても重要です。そのためには敷地を丁寧に調査しなければなりません。そこがきちんとできているところがまず素晴らしいです。小笠原さんは、一つの敷地でも場所によって、接道条件や性質、環境がそれぞれ異なることにも着目し、それぞれの場所の特徴をうまく生かして設計を進めています。保育園の内部空間、外部も、そこがどういう空間でどんな活動が行われているのかを、言葉で、図面で、ビジュアルデザインで丁寧にプレゼンテーションしています。

 


小林宥見佳さん「新たな居場所ー食を通して地域と繋がるー」

建築の特徴である「交流」のイメージをうまく伝えています。こういうところの野菜っておいしいですよね。

 

ダイアグラムは、アイデアやコンセプトを建築化するための手法です。非常に説得力のある提案です。

 

手を抜きがちな敷地案内図にも、小林さんらしいアイデアがみられます。

 

細やかな計画が伝わるだけでなく、図面の重要な要素な「見やすさ」がすごく考えられています。

 

1階も2階も、床や壁をどのような素材で構成するのかという「仕上げ」も丁寧に示されていてよいですね。

 

屋根伏図は、建物の重要な構成要素である屋根のかたちを伝える図面です。矢印と数字は勾配を示しています。

 

交流、さまざまな人同士のつながりが建築的に表現されていますね。

 

部屋ごとを壁で完全に隔ててしまうのではなくて、大きな空間をさまざまな仕掛けでうまく区切っています。

平面的なつながりだけでなく、立体的なつながり(上下階の連動や一体化)もよく考えられています。

 

軒の深さや壁面の構成を示すために、影の表現を有効に使っています。

周辺環境を巧みにとりこんで、保育園との一体感が演出されています。

東から光が差して、緑と相まってとても気持ちよさそうな園庭ですね。

 

小林さんの作品について岡北のコメント:

小林さんの作品からは、この保育園が、こどもたちだけでなく、地域にとっても豊かな場所であって欲しいという切実な願いを感じます。保育園は安全性は極めて重要なので、周辺地域に積極的に開きながら、こどもたちの安全をどう確保するのか、という点はたいへん難しい課題です。そこにまっすぐに取り組んで、「食」や「自然」をテーマに魅力的な保育園が提案されています。また、ピロティ、中庭、吹き抜け、テラスなどさまざまな建築的な工夫を盛り込んで設計者の意図がとてもよく伝わってきます。こどもたちがいろいろな場所で自由に活動をしながら、楽しく「つながる」ことのできそうな保育園です。


(講師 岡北一孝)

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