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建築学部

2年生 建築デザイン演習Ⅰ(伝統建築領域)

2年生後期の「建築デザイン演習Ⅰ」という授業は、10月から11月中頃までが第1課題、11月末頃から1月末頃までが第2課題となります。

第1課題は全員同じテーマの内容に取り組みますが、第2課題は建築デザイン領域と伝統建築領域に分かれて違う内容に取り組みます。

第2課題はどちらかを選択することになりますが、約150名の学生の内、約60名が伝統建築領域を選択し、室町時代に建てられた「国宝 東福寺三門」の図面と模型作成に取り組みました。

各自が平面図、断面図、詳細図など少し本格的な古建築の図面を画き、模型は全員で1つのものを作成しました。

 

古建築の図面は曲線を多用するので一筋縄では描けませんが、慎重に作図を進めます

図面を画き終えると、約60人が6班に分かれ、部材を切り出していきます。

作図用の図面を基に「ひのき棒」という既成品を所定の長さ・形状に切り出します。

彫刻刀やヤスリを使う作業は小学生以来という学生さんも多くおられ、危険も伴いますので、これも慎重に作業を進めます。

一昨年度の「清水寺三重塔」の模型を参考にモチベーションを高めていきます。
こんなものが本当にできるのだろうかと疑心暗鬼です。

このような模型作りの実習は今年度で4年目になります。

授業として多少のノウハウが蓄積されてきましたが、まだまだ発展途上です。

過去の作品を見ながら部材の加工や組み立ての段取りについて検討していきます。

班に分かれてそれぞれの部材を切り出していきます。段々と精度も高くなってきます。

東福寺はKYOBIから徒歩30分くらいにある禅宗寺院です。

境内は広く、国宝 三門の他、数多くの文化財があり、京都の代表的な観光地ともなっています。

図面や模型作成を通じて、理解が進み、また、疑問が生じてきたところで現地見学を行いました。

部材名称や納まりなどの知識も、建築目線で真剣に見ることにより専門性が高まります。

東福寺三門は「大仏様(だいぶつよう)」という建築様式で建てられいます。
現地で実際にそのつくりを確認しました。

文化財建造物は修理が行われる度に「修理工事報告書」が刊行され、図面や工事中の写真が入手できます。

この報告書をフル活用し、図面や写真と現地で得た知見を比べながら建物を理解していきます。

実際に作成するスケールの図面を参考に部材の取り付きなど詳細を確認しながら作業を進めます

思った以上に作業は単調で難航しますが、根気強く丁寧に作業を続けると徐々に形が見えてきます。

実際の姿を頭で思い浮かべながら作業ができたのか、非常に精度の高い部材ができあがりました。

加工精度の高い部材が並ぶと壮観です。

建築学科は1学年に約150人と多くの学生が在籍します。そのため、お互いに顔や名前を知らない方が多いようです。

建築を目指すものにとって、コミュニケーションを取りながら円滑に作業を進めていくことは非常に重要な要素です。

今回も他の班と部材の加工方法や取り付きについて情報交換・作業確認を行いながら組み立てを進めていきました。

一つのものづくりにおける共同作業は貴重な経験です。
他の班との打ち合わせを重ねながら作業を進めます。

いよいよ軸部の組み立てです。

「大仏様(だいぶつよう)」と呼ばれる様式は、柱に穴をたくさん開けて、「貫(ぬき)」や「通肘木(とおしひじき)」と呼ばれる部材を貫通されることによって軸部を強固に固め、しっかりした構造となりますが、その反面、穴が多すぎて柱が折れやすいという弱点も持っています。

そのため、今回は柱に「ラミン」という非常に硬い木材を用いましたが、硬すぎて穴あけ加工が非常に手間取りました。

やはり、国産のヒノキは加工がしやすく強度も高いため、建築材料として適していることを実感しました。

木材選びの難しさも学んだことの一つです。

柱の配置を確認しながら加工を進めます。
柱が硬くてなかなか思うように作業が捗らず頭を痛めました。

なんとか柱の加工をクリアし、組み立てに入ります。

しかし、加工の修正や部材配置の違いによりこの作業も難航しました。

何度か心が折れかけるシーンも・・・

ひとつひとつ修正を積み重ね、徐々に全体の形が見えてきます。こうなれば段々とテンションも上がっていきます。

徐々に形は見えてきましたが、まだまだ修正が続きます。

2階軸部の組み立て状況。大仏様の柱穴の多さに改めてビックリします。硬い柱にしてよかったかもしれません。

2階の軸部の組み立て状況。ここまでくれば後は1階とドッキングして屋根だけ。(のハズ)

1階と2階の軸部をドッキング。ここまでくれば後は屋根だけ。(のハズ)

様々な困難を乗り越え無事に完成。ささやかながら記念写真を撮りました。

春休みも何回か補講を行い、無事に完成させることができました。

一つの模型作りを通して、多くの事を考え、多くの知見を得て、多くの労力を費やし、多くの困難を乗り越えながら完成に至ったことは、貴重な経験になったのではないかと考えております。

(准教授 井上年和)

第7回 卒業制作優秀作品審査会
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