建築学科教員の小梶です。私の研究室ゼミには11名が在籍しています。ゼミ生は卒業設計に向け様々な取り組みを行います。現在はそのテーマを絞るための研究と、同時に将来に向けた基礎力のトレーニングを進めています。研究室では、建築空間の内部に焦点をおく設計手法により、モノから、空間へ、それらが重なり、複合し、バランスを取り、かたちづくられる環境として、真摯に丁寧に創り上げる制作を核とした研究活動を行っています。これらの活動を通じ、持続可能な社会の実現に向け、家具やインテリア、空間はもちろん、建築へ、環境へ、様々に発展しいくことを期待しています。
今回は、現在の4年生の活動と、昨年度の卒業制作の作品紹介をしていきたいと思います。週2回・3時間づつの授業は、基本的に新校舎・東館4階のオープンゼミスペースで行っています。「アトリエ」と「エスキース」を繰り返し、力を磨いていきます。
「アトリエ」はデッサン・構成・パターンなど、将来の建築家・デザイナーとしての素養を磨くトレーニングを行う授業です。その甲斐あって、昨年度は当ゼミから5人がインテリアプランナー設計製図試験に合格しました。「エスキース」では、現在卒業制作のテーマについて、ディスカッションを繰り返しています。
時には、フィールドワークを行います。都市から建築空間、モノに至るまで、様々なシークエンス(連続・順序)を共感することで、ディスカッションを深めます。先日は大阪市北区・中之島周辺を歩きました。京都では大学から鴨川デルタまでに該当する距離とほぼ同じであることを確認し、地域の重要な建築物を巡り、内部にも足を運びながら、意見交換を行うというフィールドワークを行いました。
開館したばかりの大阪中之島美術館まで到着したところ、人工地盤の外構では芝生の広場や彫刻が市民に公開され、上層に吸い込まれるような精緻な内部空間を持つ建築と共に、非常に印象に残りました。
また、美術館の一角にあるデンマークのインテリアプロダクトブランド「HAY/ヘイ」のショップでは、北欧デザインからインターナショナルな視点を持つアイテムやマテリアルに大変興味を持つことができ、有意義な時間を過ごすことができました。
ここからは、昨年度の小梶研究室ゼミ生の卒業制作作品の紹介です。サスティナブルな環境、コロナ禍でのライフスタイル、地元の課題など、様々な方向に展開しましたが、代表的な2作品の抜粋を紹介します。
1点目は藤井芹奈さんの作品「茶わんの森 ―京都市におけるLCCM住宅の活用と周辺環境―」です。東山五条から清水寺に向かう茶わん坂の敷地に、京町家のプロポーションや間取りを意識した、文化とエコの両方の持続可能性を両立させた、京都版環境配慮型住宅のモデルハウスとランドスケープを提案しています。
2点目は大見友香さんの作品「里山で過ごすダブルライフ ―西宮舩坂里山学校計画―」です。テレワークが普及した今日、住みたい場所での生活を推奨するダブルライフを提言し、都市近郊の廃校問題にも配慮した中長期型宿泊施設とレンタルオフィスへのリニューアル+改築など、新しいライフスタイルのための計画を提案しています。
より良い卒業設計に向けて、「アトリエ」や「エスキース」の日常の授業から、さらにフィールドワークやディスカッションでの体験や思考の広がりを通じて得た糧により、その結晶として結実されていくものとして、作品を「創る」という努力を惜しまぬ姿勢こそが大切だと考えています。