KYOBI BLOG

建築学部

生川研究室のゼミ活動について

みなさん、こんにちは。第3回ゼミ探訪を担当させて頂きます、建築学科教員の生川です。

生川ゼミでは、京町家の保全・継承、団地再生やマンション管理、空き家問題など、京都市内にある様々な住宅ストックを歴史都市京都としてどのように受け継いでいくべきか、住宅政策の視点から調査・研究を行っています。建築を空間としてみるだけでなくまちづくりの一つの要素、社会的資産として、特に京都ならではの文化的持続性にも着目しながら、未来の京都のために役立つ実践的な取り 組みを目指しています。

4月から4回生11名が生川ゼミに配属され、週1回水曜日の午後に卒業設計に関するゼミ発表、金曜日にまちづくり全般のレクチャとフィールドワークを行っています。とにかく机に向かって勉強する機会が多かった学生たちに、まずは建築の実物に触れ、そしてその場所(まち)にある建築を体験してほしいと考えています。体験が積み重なって経験となり、建築をみる自分自身の「ものさし」が磨かれていくことを願っています。

生川研究室のメンバー MACHIYA_VISION 八竹庵(2階本座敷にて) 久保家住宅(玄関先にて)

 

今回は、4月から行ったゼミ生の「野々村美映さん」「安澤聖志さん」のお二人にインタビューする形で、生川研究室のゼミ活動について紹介していきます。

 

まずは、「野々村美映さん」から。

 

【質問①】では、少し肩慣らしに、生川ゼミを選んだ理由とか、参加してみた印象はどうですか?

【野々村】せっかく京都の大学に通っているので、京都でしか学べないことを学びたいと思っていました。そこで、京町家というものを知り、京町家の再生に携わっていらっしゃる生川先生のもとで研究を進めたいと思ったからです。京町家の見学に連れて行ってもらったり、詳しいことを教えていただいたりして楽しかったです。

 

【質問②】少し自己紹介的なものを兼ねて、卒業制作で取り組みたい研究テーマとか、今進めている作業とかあれば教えてください。

【野々村】私は、祖父母の家を住み継げる家にしていきたいと考えていました。研究をしているうちに、周辺の地域の歴史やコミュニティのあり方に気づき、まちづくりをしようかなど、いろいろ考え中です。今は敷地データをパソコンに取り込み、住宅と公共施設と事業所の建物の色分けを進めています。これからする作業としては、地域の人口分布も調べようと考えています。

 

【質問③】京町家再生研究会のイベント「荒木棟梁のお話を聞く会」に参加してみてどうでしたか?

【野々村】棟梁の話を聞く機会は早々にないのでいい経験になりました。荒木さんは、最初から大きな仕事を任されていたわけではなく、水洗の仕事から徐々に床を貼ったりと、仕事をもらえるようになったという話も聞かせてもらいました。昔と今とでは、違うという点で、京町家の建具や畳、ガラスは住む人が自分で用意していれることも印象的でした。

 

【質問④】「八竹庵(新町通りに面する大塀造の京都を代表する大型京町家)」を見学してみて、最も気に入った場所はどこですか?

【野々村】庭です。庭を見ながらゆっくりできる空間になっていて、私も座ったり寝転がったりしたかったです。

【生川】野々村さんははじめ室内意匠に関心があると言っていましたが、周辺の歴史やコミュニティに関心が広がったことは非常に良いことだと思います。卒業設計の対象地域の標語が「地域に三世代仲良く暮らす」ということで、これだけ便利になった現在でも、昔は当たり前であったことが逆に今では難しいことも多く存在します。大工さんのお話し、庭の魅力など一見つながりがないように見えることにも新しい発見は隠れています。是非、地域も含めて住み継げるすまいのあり方について、野々村さんならではの提案を期待しています。

 

次は、「安澤聖志さん」です。

 

【質問①】生川ゼミを選んだ理由とか、参加してみた印象はどうですか?

【安 澤】私が住んでいる地元では歴史的な価値もある古い民家が多い地域でした。しかし少子高齢化や都会への移住等、様々な要因で民家の継承者が少なくなるという問題に直面しています。京都でも「京町家」という京都の歴史を語る上で重要な民家が、私の地元と類似した問題に直面している地区があり、生川教授はそれらを解決するプロジェクトを行っています。私は将来まちづくりに携わりたいと考えており、ここでノウハウを学べると思い、この研究室を志望しました。このゼミでは建物だけでなく、京都全体が抱えているマクロ的な問題を現地調査で学ぶことができることが強みだと思います。

 

【質問②】卒業制作で取り組みたい研究テーマは?現在進めている作業は?

【安 澤】前の質問で挙げた問題を解決するために、私の住む地域に現存する民家を調査し、古くからの街並みを壊さずに現代の暮らしに適合した建築を地区単位で設計したいと考えています。現在私が行っていることは、現存する民家とそれらを継承する取り組みを行っている団体にご協力を頂き調査を行っています。

【質問③】「堀川団地」見学・実測して、最も気になったところは?

【安 澤】堀川団地は1階が店舗で2階3階が住居となっている、日本で初めての店舗付き併用集合住宅です。外見は道路に面して長屋のように連なるような形で建築されています。あまり他には無いような特徴として、この団地にはベランダが無く、そのかわり住民のパブリックスペース等に使用されている広い通路があります。また内部の2階の居住スペースは玄関からまっすぐに土間、キッチンと連なっており、土間と接続して、長押や押し入れのある畳の和室が2室並ぶような形で設計されています。これは「京町家」と同じような間取りなので面白いと思いました。

【質問④】「MACHIYA_VISION:伝統文化の未来を考える」に参加してみてどうでしたか?

【安 澤】今回のシンポジウムでは、開催場所である「八竹庵(旧川崎家住宅)」や「有斐斎弘道館」を継承するにあたり行った活動報告や、同時開催されていた、KYOTOGRAPHIEを京町家で催した目的、そして京都だけでなく日本の古くからある文化や建物を保全、継承するためにはどのような取り組みを行うべきかをシンポジウム参加者と共に考えるという内容でした。

八竹庵の主である、黒竹氏は「八竹庵は「この場所で」どう残すのかが大切だと思いました。移築することは、先人たちの足跡を崩壊させることを意味するのではないのか?この建物自体には役に立つのもではないが、文化やものは精神的なことから生まれるものであるからこそ、土着的であるべき。」とおっしゃっていたのがとても印象に残っています。どのような手法で保全、継承を取り組むのか、とは私の研究テーマであり、今回のシンポジウムはとても参考になりました。

【生 川】安澤さんは、研究室の配属前から一貫して、地元の城下町に継承される屋敷群の将来について関心をお持ちですよね。その地で生まれ育った原風景が心に刻まれていて、まちづくりに対する熱い想いがひしひしと伝わってきます。屋敷群が現在に息づいていることにはその背景と意味があると思います。地道な調査や関係者へのヒアリングは欠かせませんが、もう少し鳥瞰的な視点や人とのつながり等、多角的に建物とまちとの関係性を見出していけると面白い展開が見えてくるかもしれません。是非、地元を素晴らしいまちにしてください。

 

 

今回インタビューに答えてくれた2名の学生以外にも、生川が関係している京町家の保全・継承に係る市民活動のイベント、京町家の実測・使われ方の記録、都市住宅学会の勉強会、マンション管理評価機構の研究会、過去に関わったプロジェクトの現地見学会など、多種多様な取り組みに学生たちが関心をもって参加してくれています。全員を紹介できないのは残念ですが、学生たちには、生川だけでなく、異なる立場の、異なる専門の先人たちの考え方を一つでも多く聞いて、日々成長していってもらえればと願います。以上、生川研究室のゼミ活動の紹介でした。(生川慶一郎)

 

河村ゼミの活動について
一覧へ戻る
美術工芸学科 卒業制作研究テーマ審査会