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建築学部

井上(年)研究室の紹介

こんにちは。井上年和研究室のご紹介です。

当研究室は、伝統建築領域に所属し、社寺建築や古民家、町家、近代建築などの歴史的建造物やまちなみが形成された歴史を明らかにした上で、それらを記録・保存・再生・活用・継承することを目的に研究活動に励んでいます。

例年10名前後の4年生がそれぞれの研究テーマを設定し、卒業制作を行います。

昨年度は12名の卒業生により12のテーマが設定されました。

そのうちいくつかをご紹介させていただきますと、「大正大礼饗宴場」といって大正3年(1914)に京都の二条離宮(現 二条城)の敷地内で行われた大正天皇即位のための建物や北野天満宮の多宝塔など失われたものの再現がありました。

京都は失われた建物でも優れたものが多かったのですが、その史料も豊富にあり、再現研究を行うには持ってこいなのです。

大正大礼二条離宮饗宴場の外観再現CG。かつてこのような大規模でかっこよい建物が建てられていたのです。
大正大礼二条離宮饗宴場の内観再現CG。内装も豪華。のちに「京都市公会堂」で再利用されましたが、現在はありません。
北野天満宮多宝塔。かつては神社の中にお寺の建物がある「神仏習合」の世界が一般的でしたが、明治になり「神仏分離令」により神社からお寺の要素が撤去されました。

また、現存する京町家の保存再生をテーマとして現地調査により改修履歴を明らかにしたものやコンピューターによる3次元構造解析プログラムを用いた五重塔の耐震性に関する研究などもあり、バリエーションに富んでいます。

とある京町家の「建設当初の姿」と「現在の姿」。建物の改修履歴を追うことで、どのように使い方が変化し、商売や生活などの営みが変化してきたかがわかります。
3D構造解析ソフトによる五重塔の耐震性に関する研究。地震波による揺れ方の違いをシミュレートし歴史資料との照合を行いました。

他にも、この大学の本部がある京都府南丹市天引にある古民家「天引村倶楽部」の調査を行って、当初の復原模型や再生案を提示するなど、むらおこしの一環として事業に携わるものもありました。

この取り組みは新聞にも報道され、今も模型を見に国内外からたくさんの方が見に来られて活性化に貢献しているようです。

園部町の「天引村倶楽部」に模型の引き渡し。その後もたくさんの方に見ていただいているようです。
上 復原模型  下 活用提案模型

今年度も昨年度同様12名の学生が配属され、すでにそれぞれの研究活動を始めています。

寛永3年(1626)9月6日から10日まで、徳川将軍が後水尾天皇を二条城に招き、もてなした行幸御殿の再現に向けてゼミ生みんなで二条城を訪れ、卒業生に案内をお願いしました。

この卒業生は京都市の職員で二条城事務所で文化財建造物の修復に携わっています。

専門家の見地から解説してもらいとても充実した見学会となりました。

卒業生による二条城二之丸御殿の解説。この南に400年前は能舞台と行幸御殿があったらしい。興味深くお話をお伺いしました。
みんなで記念写真!

京都から離れますが、東京都港区にある廣度院さんというお寺の「練塀」(表面に瓦を積んだ塀)という種類の土塀の調査も行っています。国の文化財に登録されていますが、修復工事よって他にはない内部構造が明らかとなってきており、他の土塀と比較検証する非常に興味深い研究です。

他の練塀についてもしっかりと調査を行って、まとめがいがある内容なので頑張ってほしいです。

東京にある江戸時代の練塀を調査。かつてのお江戸は練塀が多くつくられ独特の景観を醸し出していたようです。
実際の練塀を見て回ると様々な意匠と構造が見られます。いま練塀が熱い!

その他にもそれぞれ研究課題があり、みんな非常に熱心に研究活動を行っています。

毎週1回、報告会を行い、他の人の研究内容や進捗を共有することでモチベーションが高まり知識や情報が広がり、何よりもコミュニケーションも深まります。

また、別日に週1で作業日を設け、作業内容や方法の打ち合わせも行います。

報告会では進捗状況を確認します。毎週の積み重ねが大事。
無事に報告会が終われば、ホッとした表情で記念撮影。お菓子を食べながら雑談タイムが始まります。

またご報告の機会があれば順次みていただけると嬉しいです。

(准教授 井上年和)

生川研究室 ゼミ活動の紹介 
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1年生「建築設計導入実習」の様子です。