KYOBI BLOG

建築学部

人見研究室の紹介 2024

こんにちは、建築学科の人見将敏と申します。私の研究室の紹介をさせていただきます。

○ 研究室のテーマ:建築設計/建築論

私の研究室では、主に建築設計や建築論を専門としており、特に建築の意匠・デザイン面や、建築と都市の在り方に着目しています。

建築設計では、建築を「考え / 手を動かす」ということを大事にしたいと考えています。当たり前のことのようにも見えますが、継続して実践するのはなかなか難しいことです。設計を行う上での重要な「姿勢」を身につけてほしいと思っています。

また建築論に関する研究も行なっています。建築論とは、簡単に言うと、建築とは何か?どうあるべきか?を考える学問です。建築論の中にも色々な種類があります。私の場合は、特に、作家論という、過去の一人の建築家もしくは複数名からなる建築家集団を対象に、その人物の人となりや生きた時代背景を含めて建築等の作品・活動を分析する研究を行っています。その分析を通して現代の設計やものの見方、都市の考察にフィードバックできることを探っています。

建築設計と建築論は両輪の関係にあります。二つのことを行うと最初はスピードが上がりませんが、だんだんとそれらが結びつき、相乗効果が生まれてくれると良いな、と思っています。

研究室の活動方針:実感(リアル)を大事にすること

今年度の所属学生数は学部4年生10名です。活動の方針として、基本的には、それぞれの関心をもとに進めていきたいと考えています。そして、その自身の関心の持つ事柄や身の回りのものごとを、「実感」を持ちながら深く掘り下げてほしいと考えています。

私たちの生活や身の回りにある建物はとても具体的でリアルなものです。もちろん生活や建物はそれだけで成り立っているのではありませんが、実感を伴った発見・考察が一つでもあると、それが10年後・20年後の自分や社会、こうあると良いのではないかというイメージにつながるように思います。学生さん、と一括りにせず、一人一人にとっての、建築を実感する時はどんな時なのだろうかと考えながら、日々、接するように心掛けています。

ただ、実感を伴った発見・考察をするためには、歴史・過去の人が考えたことを参照すること、また、ものごとの連関を可能な限り捉えることが重要です。そういった点で京都で学ぶということはとても意義深いものと言えましょう。京都は、歴史や自然が自分のすぐ隣にいて、友人とおしゃべりするかのようにそれらと話せる稀有な都市です。その都市の力を十二分に活かしてほしいと思います。

○前期のこれまでの活動:輪読・テーマ設定・フィールドワーク

前期の活動の話に移りたいと思います。

前期は、数冊の本を輪読し、その後、自身で読みたいと思う本を選び、そこから後期の卒業設計・論文(ないし大学院での研究)で扱いたいテーマにつなげていく、ということを行っています。前期は土台・基礎をつくる期間と捉えています。

1冊目は、毎年共通で、『都市と建築の解剖学 形態分析によって「設計戦略」を読む』(ジェフリー・H・ベイカー著、富岡義人訳、鹿島出版会、1995年)を読むことにしています。建築や都市・場所の見方や読み方、図での表し方とそれに関わる言葉に触れます。

2冊目は、タイプの異なる2冊を選び、それぞれ分かれて読んでもらいました。今年度は、一つは建築論・作家論に関する本で、『今井兼次著作集2 作家論 Ⅰ 私の建築遍歴』(今井兼次著、中央公論美術出版、1993年)、もう一つは都市論に関する、『都市論を学ぶための12冊』(若林幹夫著、弘文堂、2014年)としました。どちらも4年生にとっては難しい内容、聞きなれないものが多かったようでしたが、分からない部分を調べながら発表してくれました。知る機会になればと思います。

3冊目は、各自で選んだ本について発表してもらいました。自身のこれまでの経験や趣味と結びつけながら、野球やスノーボード、F1、映画、ファッションなどに関するもの、震災に関連するもの、また、授業課題からの発展として社会学に関するものなどがありました。建物を建てる前提で考えを始めるのではなく、建築を通して可能なことと、そうではなく他の人の力を借りることの境目を整理していくことで、自身が将来関わりたいと思えることのきっかけを見つけてくれればと思っています。

上記の3冊目の発表は毎年行っているものですが、わたしの知らないことも多く、いつも新鮮な気持ちで発表を聞いています。特に今年は、ヴァージル・アブロー Virgil Abloh(1980-2021)という、建築を学んでからファッションデザイナーになった人物を初めて知ることができ、面白かったです。衣服や靴、鞄などをつくり出す際、彼のその学びの背景から近現代の建築・建築家を意識・参照することも多く、加えて家具の製作なども行なっていたそうです。このように、自身の参照したい人物を見つけることはとても重要です。その人物と作品を分析することが自身の糧となるので、そのような人物を見つけてきたことは素晴らしいなと思いました。

それぞれがそれぞれのやり方で、どこまで掘り下げられるかに期待したいと思います。

上記以外にも、4年生の希望もあり、フィールドワークも行いました。大阪に出向いて中之島のあたりを散策し、大阪市中央公会堂や大阪府立中之島図書館などの建築を見学しました。館内の解説でそれらの建設に至った経緯等も確認しながら、当時の大阪の息吹と、それを残し使い続けようとする態度や工夫に触れることができました。最後にその時の写真を添えて、研究室紹介を終えたいと思います。お読みいただきありがとうございました。

フィールドワークの様子(大阪市中央公会堂)

建築学科 准教授 人見将敏

伝統建築コース 大上研究室の紹介
一覧へ戻る
山内研究室の紹介 2024