この演習では、京都の文化を担うありとあらゆる対象物を「フィールドサーヴェイ」を通じて体感し、学術的に捉えなおすこと基本にします。さらに現地で得た知見を「マップ作成という編集行為」を通じて京都を学問的に見つめる演習です。
京都は、幾重の時代背景をもつ複雑な歴史都市でもあり、現代都市でもあります。その理解は様々な着眼点を基にいくつかの切り口を設定し、対象を客観的に見つめなおし、正確な情報の裏付けがなければ太刀打ちできません。
日頃スマホを片手に京都を歩くと、多くの情報が押し寄せ検索しても知りたい情報にたどり着けず「ネット社会」に翻弄させられます。しかし地図やガイドブックを片手に歩きますと、効率が上がった経験はありませんか。見る目を養えば、京都は地勢と千年を超える事象が高度な文化形態を作り上げた、複合的な環境要因が多いことに気が付きます。より深い京都を知るには現地を歩く「知的な道しるべ」が必要なのです。
今回、4月より現地を教員とともに回り、以後も各グループなどで現地確認を重ねながら京都の地勢や各地の息吹を感じ、自己の旺盛な好奇心に出会いました。雨の多い時期とも重なりましたが、写真の撮り方や人々の観察、ヒヤリングや史実・資料など確かな情報にも向き合いながら演習を積み重ねました。
現地情報を資料や教員の指摘を基に整理します。形が現れますと「テーマ設定」や「なぜこの事例を選んだのか」という難題に再度ぶつかります。センスには建築や景観の知識と感性が要求されると同時に、設計意図を紡ぎだして建築形態の裏側にある当時の時代背景や造形理念を再考する能力も要求されます。
最終日には素晴らしい作品が提出され、建築との対話から生まれた「京都学」が学生皆さんの中に生まれたと思います。お疲れさまでした!
(講師 北岡慎也)