こんにちは。建築学部 教員の井上晋一です。建築デザイン領域の研究室を運営しています。
私は、建築計画を専門とし、特に集合住宅の中間領域に着目した研究を行っています。中間領域は、異なる空間の間に存在する曖昧な領域です。海外とは異なり日本の建築空間にはこの中間領域が多く存在します。空間と空間が直接結びつくのではなく、中間領域を介して柔らかく結びついています。例えば、日本の縁側空間はこれに当たります。このような空間と空間の関係性を追求すると、人と空間の関係性や人と人の関係性を分析・考察することになります。また、関係性を考慮してデザインすることを「関係性のデザイン」と呼んでいます。特に大学院生には、関係性を意識した研究を行ってもらっています。今年の春に学部生と大学院生が卒業し、現在は4年生が10名在籍しています。
まずは、大学院についてお伝えします。これまで3名の大学院生が卒業していきました。今年は2名の4年生が大学院に進学予定となっています。今春卒業した大学院生は、「蔭による道の中のスローな場」(修士梗概集vol.2 参照)というタイトルで修士設計を行いました。学部時代から「かげ」をテーマに作品制作を行ってきました。「かげ」は「影・陰・蔭」と表現され、それぞれ独特の使い分けがされています。この特性を活かし、時間軸が加わった建築空間を提案しています。「かげ」を用いて中間領域を演出し、「かげ」の効用により滞留行動を誘発するものです。
学部生に関しては、3年後期から研究室に配属されます。3年後期は研究室に出入りし、4年生の先輩から演習課題や就職活動についての情報交換やアドバイスをもらいます。本格的な研究活動は4年生になってからです。昨年の4年生はコロナの影響をもろに受けた学年で消極的な学生が多かったですが、今年の4年生はポジティブでアクティブな学生が多いです。4年生前期は、全員でコンペに挑戦しました。
コンペは、大阪ガス実験集合住宅NEXT21を舞台とした「NEXTのNEXT」です。この集合住宅は、私が博士課程在学中の約30年前に建設された実験集合住宅です。私の所属していた研究室で企画段階から関わり合いがあったため、竣工後に様々な実験に参加さえて頂いた思い出のある集合住宅です。
コロナ以降、なかなか模型をつくる機会が少なくCGで代用する学生が多かったこともあり、まずは模型を作成することになりました。段ボールと木材を用いて再現することにしました。模型をつくることで建物の構造や構法を詳しく知ることができます。
学生達は、役割分担を決めグループごとに作業を進めました。また、コンペのアイデアに関しては研究室内コンペを行い提案をまとめていきました。人数が多いため、話し合いや調整に多くの時間を費やしましたが、締め切りギリギリに提出することができました。もう1週間早ければ、プレゼンテーションに時間を割くことができましたが、よく頑張りました。
前期の後半は、卒業制作に向けて各自アイデアを検討しました。前期の成果発表会で発表したタイトルは以下の通りです。
・犬山再生計画~あらゆる形の旅館建築~ ・子育て世帯と労働者を支える新たな拠点
・交野市駅間再開発 ・廃校を活用した地域交流施設
・滞留~千里丘駅前開発~ ・next high school
・木×町 ~自然の街づくり~ ・Cutting-edge /saving Tower
・和の郷 ・世紀公園
学生の多くは、よく知る地元の敷地を対象としテーマを考えています。まだまだ、途中段階なので後半に向けて頑張ってくれると思います。
さて、今年の夏は非常に暑いですがKYOBIの学生の夏も非常に暑いです。建築学科の3年生の多くは二級建築士や木造建築士の試験勉強でほぼ夏休みがありません。私の研究室の4年生の中にも、残念ながら昨年夏の二級建築士製図試験を突破できなかった3名の学生が再挑戦中です。また、研究室の学生2名は一級建築士の学科試験に合格しており、製図試験に向け頑張っっています。
今回のブログはちょうど夏の公開ということで、前期と夏期の様子についてお伝えしました。後期に向けてみんなガンバレ!