こんにちは。建築学部教員の森重です。
建築学部の研究室は「建築デザイン領域」「伝統建築領域」「融合領域」の大きく3つに分かれていますが、森重研究室は「融合領域」にあたる研究室です。教員の専門分野としては、建築計画・住宅計画・リノベーション、地域計画・まちづくり、および建築関連法制度などの建築社会システムといった分野で、京町家や路地の現代的価値とその保全・再生・活用、歴史的市街地におけるまちづくりなどを研究の対象としています。
研究室に所属する学生のみなさんは、各自の問題関心に従って、上記よりもう少し幅広く研究テーマを選定していきますが、社会の広がりの中で建築をとらえること、さらには、広い視点から多面的に物事をとらえることを大切に、研究室内での議論を行っています。
今年度の森重研究室には、学部4年生が12人、大学院生1人、合計13人が所属しています。研究室では、個人の研究活動に加えて、研究室での活動も行っています。ここでは、学部生の今年度のこれまでの活動の様子をご紹介します。
1.見学会の開催
例年、町家やまち歩き、建築見学などの見学会を行っています。今年は、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024」期間中に、京町家八竹庵、誉田屋源兵衛を見学しました。爽やかな気候の日に、建物内部から庭までがひと繋がりとなる空間構成を実感しました。
合わせて公開されていた、安藤忠雄設計のTIME’Sビルまで足を伸ばしました。比較的初期の安藤建築の名作TIME’Sビルは、高瀬川沿いの細長い不整形な敷地に、正方形をベースとしつつ回遊性の高いプランニングの妙を存分に楽しむことができます。小規模な建築の中に豊かな空間体験が詰め込まれている見事さに、急遽、写真祭にあやかって即席のフォトコンテストを実施。各自で建物内を歩き回り、イチ推しの構図を探しました。携帯で写真を選ぶ様子は真剣そのものです。
2. 「NEXTのNEXT」コンペ参加
研究室では、見学会の他に何かその年ごとに決めた活動を行います。今年度は、次世代型スケルトン・インフィル住宅として有名な、大阪ガス実験集合住宅NEXT21が建築から30周年を迎える記念として実施された「NEXTのNEXT」という学生アイデアコンペに参加することにしました。コンペに取り組むにあたっては、NEXT21の現地見学を行い、NEXT21の設計メンバーのお一人でありその後の居住実験を継続して主導されている本学の髙田光雄教授によるスペシャルレクチャーを受けました。その後、参加者全員でアイデア出し、コンセプトメイキングなどの議論を重ね、最終的に一つの案を作成していきました。プレゼンテーションシートのコンテンツを協力しながら作成していく中で、プレゼンの技術も少し共有できたのではないでしょうか。
3.路地調査・まちづくり協議会の活動への参加
教員が実施している調査研究や、まちづくり活動の現場への参加も随時行います。今年度は、東山区内の路地にある住まいへのアンケート調査票の配布を行ったり、東山区粟田学区夏祭りにおけるまちづくり協議会のかき氷店のお手伝いに参y加したりしました。京都美術工芸大学は、京都市内の非常に立地の良い場所にありますが、忙しい学生の皆さんは大学と家の往復に終始しがちのようです。このような機会に、京都のまちに出て、そこで暮らす人々の様子や思いをリアルに感じ取ってもらえたらと思っています。
その他に、町家や民家の実測調査を行うこともあります。今年は2人のメンバーが、卒業研究で町家や民家のリノベーションに取り組むことにしており、対象となる建物の実測調査を、他のメンバーも協力して行いました。
卒業研究に取り組む4年生は、それまでの3年間の学生生活とはかなり異なる研究室の活動に、はじめは戸惑うこともあるかもしれませんが、今しかできない活動に積極的に参加して、遠い将来、ふいに思い出すような体験を一つでも多く重ねて欲しいと思っています。
(教授 森重幸子)