こんにちは。建築学科教員の根來です。開設3期目、4年生10名が所属している研究室です。
教育の方針~自立できる設計者を目指して~
感性と理性を両輪で磨き、実践していくことを大切にしています。KYOBIは美大ゆえに、感性の優れた学生が多いように思います。しかし実社会は感性だけで生きて行けるものではありません。特に建築設計の分野においては、設計者ひとりで完結する世界ではなく、施主がいて、つくる人がいます。さらにその向こうには、素材を生産する人がいて、地域産業が成り立っています。その結果として、風景や街並みが形成され、歴史や文化が醸成されていきます。学生たちが社会に出た時、設計という行為を通じて、多くの人と対峙し、共感しあい、ともに協働していくためには、自身の思考を相手に的確に伝える能力としての論理的思考力は必要不可欠となってきます。そんな思いから、前期は学生各自が自ら興味のあるテーマを設定し、独自の切り口を見つけ、それを深掘りし、自らの力で研究成果をあげてもらいました。そのプロセスにおいては、学生同士でディスカッションし、切磋琢磨しあい、他者の考えを包摂しながら、視野を広げていきました。私自身は住宅設計を専門としているため、それを前提とした学生が集まってきていますが、研究主体は学生であり、その内容は下記のように多岐にわたっています。
2024年度生が取り組んだ研究テーマ(前期)~オリジナリティを求めて~
建築分析チーム
・今村遼汰 |感覚的空間と豊かさに関する研究
・加藤沙希 |コンプレックスがある敷地に建つ住まいの採光に関する研究
・黒山遥斗 |竹原義二から学ぶアプローチ空間の設計手法に関する研究
・野村佳夏子|意外性を持った永く愛される住宅に関する研究
・五十嵐小雪|小さな家から読み解く「家族のため」の家に関する研究
地域分析チーム
・青山栞己 |あすけの軌跡に関する研究
・中田ゆずの|上下町民が語る「上下」という町に関する研究
・新原千宙 |デザインサーベイを通した男木島の空間読解に関する研究
・二宮実夢 |シャッター街再興による地域活性化に関する研究
・森田優佑 |今熊野学区というまち形成に関する研究
教室を飛び出す~リアリティを求めて~
理性を培うとともに、感性を磨くこと。それには、いい建築を見て、体感することが一番。以下は、2024年度生有志とともに、月一回くらいのペースで出掛けた見学先。①佳水園(設計:村野藤吾/リノベ:中村拓志)、②四君子苑(工匠:北村捨次郎/母屋設計;吉田五十八)、③Time’s(設計:安藤忠雄)➃聴竹居(設計:藤井厚二)、⑤左官講習会、⑥ラピュタ、⑦琴の浦・温山荘園、⑧高山寺(石水院&遺香庵)、等々。
卒業制作(後期)に取り組む~自分らしく生きる道~
後期がはじまり、現在は前期で得られた研究成果の実践の場としての卒業制作に取り組んでいます。卒業制作というのは、たいへんなエネルギーを使います。建築の学生というのは不思議なもので、就職も決まり、遊びたいだろうに、何故ここまで打ち込めるのだろう?と思うことはあります。私が言えることは、その時間は決して無駄ではなく、今後の人生の糧になるはずです。長い人生、様々なハードルが待ち受けています。ハードルにぶち当たった時は、仲間とともに切磋琢磨した時間を思い出して欲しいと思います。きっと乗り越えられます。残りの学生生活、自分にしかできない時間を過ごし、社会に羽ばたいていってもらいたいと思っています。
(准教授 根來宏典)