今回は1年生の授業の様子をお届けします。
ご紹介する授業は「造形基礎演習Ⅰ」です。
この授業は、デザイン領域と工芸領域に分かれており、私の担当する工芸領域では、油土を使用した塑造作品の制作を行います。今回の塑造制作は「縦・横・奥行の多方向から表現する立体造形物を一つの作品としてまとめ、全体的な構想力・表現力の習得」及び「塑造造形技法の習得」を目的としています。
課題は自由課題で、各々でテーマを決め制作を行います。多くの学生は、動物をモチーフに制作していました。
制作構想から行い、デッサンを通して、自らのイメージを確立させ、それをもとに、いよいよ制作に取り掛かります。まず塑造の土台として、心棒と呼ばれるものを制作します。これは人間の骨格にあたると考えると分かりやすいでしょう。骨格が無ければ人間は立っておられません。しっかりと自立させる為に木片で大きな骨格を、針金で細部の骨格を成形します。その後、油土の喰い付きを良くするためシュロ縄を巻いて、心棒の完成です。
心棒が完成したら、油土で成型していきます。立体は、平面とは違い多角的な造形が必要になります。自らが制作したデッサンと写真などの参考資料を基に制作を行いました。
以上が塑造制作の大きな流れです。
続いては、学生の作品をいくつかご紹介致します。
〇「アルマジロトカゲ」
岩が多い荒野に生息するアルマジロトカゲは、逃げ場のないところで危機を察知すると、防御行動として尾を咥えて体を丸めます。こちらはその瞬間を切り取った作品です。ややデフォルメはされておりますが、しっかりと身体的バランスが取れています。
〇「猫又」
年を経た猫は、尾が二つに裂け人を惑わす「猫又」という妖怪になると云われています。絵画などでは、よく手拭いを被り踊る様子が描かれます。この作品は、肩に手拭いを掛け、今から踊り出さんとする様子といったところでしょうか。毛の質感までこだわった作品です。
〇「鯛」
海中遊泳する鯛を表現した作品です。鱗の表現に苦戦したようです。鰭や尾の運動により、海中に泡が立つのが目に浮かぶような躍動感があります。全体的にも潮の流れが感じ取れるような作品へまとめ上げています。
〇「山羊男」
頭部と両手全身を覆う体毛は山羊、その他は人間の部位で構成され、四足歩行の怪物?怪人?兎に角不思議な生物です。キリスト教徒を誘惑する悪魔・バフォメットをモチーフにしているのか、はたまた人間が山羊になる途中を切り取ったものなのか。想像の余地を残すユニークな作品です。
〇「T・レックス像頭部」
T・レックスの頭部に焦点を当てた作品です。この子は、恐竜のデッサンもそれなりに描き上げており、塑造造形もカタチを捉えて作り上げています。T・レックスの迫力を感じます。
工芸領域には彫刻・木工・漆芸・陶芸・文化財と種々様々なコースが存在していますが共通して立体物を扱っています。
今回の塑造はこれら全てのコースの基礎となる造形力を身付ける課題です。上手下手、器用不器用は関係なく、まずは自分の思うカタチを表現できるように努力する事が大切です。
彼等は大学生活も始まったばかりで、大半の学生は塑造制作初挑戦でした。
まだまだこれから。
授業外でも積極的に制作に取り組んで欲しいと思っています。
工芸領域彫刻コース特任講師 青木太一