こんにちは。
今回は、3年生後期のプロジェクト演習Ⅲで取り組んだ根付制作についてご紹介いたします。
さて、みなさまは《根付》をご存知でしょうか。この《根付》とは、江戸時代に武士や町人たちが、巾着や煙草入れ、印籠(いんろう)などを帯から吊るすときに付けた滑り止めの留め具です。実用品であった《根付》は、次第に細工や彫刻が凝られるようになり、装飾品やアクセサリー的な側面が強くなっていきました。実用以外にも鑑賞としての用途を持った《置き根付》も生まれたことで、根付が根付であるための制約も規定され、その制約の中で技巧を凝らし、より美術工芸品としての地位を確立させていきました。
現代ではストラップとしての用途で身に着ける方もいるようです。
通常の根付は、象牙(ぞうげ)を用いることが多いのですが、象牙は現在入手が大変困難であることから、木材で代用して制作をおこないました。
今回のプロジェクトに取り組むのは、彫刻専門の学生ばかりではありません。デザインや工芸、領域の枠を超えて参加してくれました。
初めて彫刻刀を使う学生もいるので、彫刻しやすい木目の通ったヒノキ材やヒバ材を使用しています。まずは図面を起こして、その後に油土でエスキースを制作しました。
そしていよいよ本番です。刃物を使い慣れている学生はどんどん進めており、初めての学生は苦戦しながらも自らのイメージする形を彫り出していきます。
2~3個仕上げる学生もちらほら見られました。
初めての学生のことも考慮して、通常の根付よりは、やや大きいサイズでの制作させています。
上の作品は、CULTUREデザインコースの学生が制作したものです。《ねこ》の制作時は、初めての彫刻で最初は苦戦していましたが、パンシリーズに入ってからは慣れたものでサクサク制作を進め、彩色まで施しています。
最後に蜜蝋を使用して仕上げとしています。
また、今回は3年生の授業でしたが、最後に彫刻分野の1年生も有志として参加してくれましたので、そちらの作品もご紹介させていただきます。
質感へのこだわりが伝わってきます。どちらも堅いツゲの木を使用し、《栗》は拭き漆を施して仕上げとしています。
今回制作した根付は、2023年度のKYOBI祭にて販売予定です。また直接ご覧になっていただければと思います。
木工彫刻分野
講師 青木太一