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みなさんこんにちは。
工芸領域教員・漆芸の遠藤です。
漆の工芸品には、貝の真珠層を模様状に加工した
「螺鈿(らでん)」という加飾(飾り付け)の技法があります。
この技法では、夜光貝・蝶貝・鮑貝などが使われていますが
貝の真珠層から反射されて目に入る
青や緑、ピンクいろなどのいわゆる構造色が大変美しく
1000年以上の昔から、見る者を引き付けて止まない魅力があります。
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一般に私たちが作品を作る場合
漆芸の材料を扱うお店から、素材として加工された貝の板を購入
表現したい模様に切り抜いて作品上に漆で貼り付けます。
ちょっと寄り道をしますが
過去の実習で作業していた「厚貝(あつがい)」の技法について
少し見てみましょう。
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初めに図案の輪郭を貝に写して、糸鋸で切り出します。
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次に輪郭線をやすりで削って整えます。
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板に仮止めして、表面を紙やすりできれいに整え
研磨剤でこすって光沢を付けます。
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最後に作品の表面に漆で貼り付けて完成です。
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厚貝の技法には、表面に貼り付けるだけでなく
作品を彫り込んで嵌め込む方法もあります。
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こちらの方が難易度は高いかもしれません。
さて、今回の演習では
必ずしも漆芸の螺鈿技法を学ぶ、ということではなく
漆芸以外の学生それぞれが所属する専攻で
普段あまり出てこない「貝」という素材を使い
加工して作品を作ってみることを目標にしています。
貝を使った作品を考え、使えそうな貝を探し
実際に加工して形にしてゆくところがポイントです。
貝の入手方法は、購入・採集・譲り受ける
どれでも構いません。
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さっそく貝を手に入れてきました。魚屋さんで購入したそうです。
何やら茹でているようですが・・・・
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この後、おいしくいただきました。安全なものであれば
賞味することで素材への理解も深まりますので
作品をイメージする上で、実は大切なことかもしれませんね。
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手に入れた貝殻を使えるようにしてゆきます。
場合によっては「塩抜き」が必要になります。
茹でてみたり、長期間水に浸けたりと
なかなか手間がかかります。
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ある動画サイトで見つけた方法を試してみます。
塩酸系の洗剤で貝殻の外殻を溶かして
内側の真珠層を出せるか実験しました。
素手ではあまり良くありませんので
安全面を配慮して手袋を着用します。
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しばらく洗剤に浸けた後、表面を金属ブラシでこすって外殻を剥がしてゆきます。
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かなり真珠層が見えてきました。
外殻の落ちがもう一つのところは、綿棒なども活用して
ピンポイントで剥がしてゆきます。
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物理的手段で外殻を除去する学生もいます。やすりで削っていますね。
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漆芸の螺鈿では使わない貝にもチャレンジです。
学生それぞれのアイデア・目の付けどころが面白いですね。
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ある程度イメージが固まり、貝の準備ができましたので、試作してみます。
透明な合成樹脂に絵の具を混ぜ、色を付けています。
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貝の中に海があるような、面白い作品ができました。小さな巻貝が見えますね。
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こちらの作品では、光硬化樹脂に専用の染料で色を付け
線描き蒔絵の模様に被せています。
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光硬化樹脂を固めています。
まだ前期の途中ですので、授業は残り5週間ほど残っています。
これからますます
オリジナリティあふれる作品が出来あがってくると思います。
つい先日の授業で学生諸君には
作品の進み具合や今後の展開について
授業内で簡単な発表をしてもらいました。
作品はアクセサリーが多いようですね。
他の人に話すことで、自分のアイデアや
これからの工程を改めて把握することにもなりますね。
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それでは学生の皆さん、楽しい作品を期待しています。