6月14日(火)、建築学科 小梶研究室+人見研究室・合同ゼミ企画として、戸田建設株式会社建築統括部プロジェクト設計部の山本恭代氏を招いてE4・フォーラムー東館設計の軌跡ーを開催しました。
京都美術工芸大学東山キャンパスは、「番組小学校」と呼ばれる京都市特有の学校群の一つ、元貞教小学校跡地に建設されています。中庭を囲むように東西南北にそれぞれ建物が建っており、一部施設はその小学校の校舎をリノベーションして再活用しています。その中で東館は、旧体育館を解体して多目的ホールや大講義室、建築学科の研究室などを包有する新校舎として改築され、2021年に竣工しました。
今回のフォーラムでは、東館の設計当初から設計に関わった本学建築学部の人見准教授と、基本設計からプロジェクトの中心となって取り組まれた山本氏から、竣工に至るまでのお話を伺いました。
まず、人見准教授からは「企画~基本計画について」。敷地とその周辺の歴史を踏まえ、地域に貢献する開かれた場所としてキャンパスのデザインは重要であること。その上で、近年のサスティナブルな大学キャンパスの在り方として「キャンパス・リビングラボラトリ(生きた実験場)」という考えがあること。京都におけるArts&Craftsのための場所、思索・制作の場所として、授業外の学生の居場所や時間を豊かにしたいと考えたこと。これらが実現された東館の空間で現在を生きる学生同士が語り合うことで、本学の理念でも触れられるバウハウスのような、近代の建築・芸術教育の場が持っていた瑞々しさに近づけるのではと締めくくられました。
続いて山本氏からは「基本設計~設計監理、BIMの取組み」について。中庭側の東館西面について、現在の外観のようなカーテンウォールに辿り着くまで数々の案を出して模索されたこと。住宅街側の東面についても、周辺環境との融合および建築規制をクリアするために多々検討されたこと。北山杉の使用について、防火上の制約に対処しつつ、エントランスロビーや大階段の大きな壁面では京都ならではのデザインを施したこと。また工事中の設計者の仕事としては細部の最終的な大きさや色の決定、現場で気づく問題対応や施主の新たな要望への対応などがあること。近年の取組みとしてBIM(Building Information Modeling)の活用など、いずれも施工工程表や実際に使われた図面を提示しながら詳しく説明され、先に人見准教授が話された計画・構想がどのように実現されていったのか、また日々の学びが現場でどのように生かされるのか窺えるお話に、学生たちは集中して聞き入っていました。
お話の後、山本氏からの「東館の使い心地はどうか?」との問いに、学生からは「開放感があり、明るい感じがしていい」「階段はちょっとしんどい」といった回答が聞かれました。続く質疑応答では参加したすべての学生から質問が出され、小梶特任教授からのコメントも交えて今後実践の場でも役立つ話で盛り上がりました。フォーラムを通して建築の学びにつながる東館の工夫について改めて認識でき、今回の会場・4階共用通路部についても更なる活用方法が生まれそうです。