京都美術工芸大学大学院建築学研究科建築学専攻(KYOBI)は、シンガポール国立大学大学院デザイン工学部建築学科(NUS)と令和4年度前期・後期にわたり共同で設計演習を進めています。
KYOBIからは修士課程の1年生、NUSからは建築修士(M.ARCH)と建築保存修士(MAArc)の2つのデザインスタジオと、京都の学校跡地の保存と再生をテーマにした設計演習を行っています。
その調査とグループワークの一環として、2022年9月19日(月祝)~21日(水)、シンガポール国立大学の方たち(学生21名、教員2名)が来日し、建築学科・大学院建築学研究科の学生・教員たちとともにワークショップを実施しました。
1日目は台風14号の接近が心配されましたが、学内でのグループワークに続いて付属施設・京都伝統工芸館の見学を無事決行。
旧毎日新聞ビル(1928ビル)や新風館(旧京都中央電話局)など、三条界隈の近代建築も観察しながら移動し、京都伝統工芸館ではグループ校・京都伝統工芸大学校の学生や教員による作品を鑑賞しました。
2日目も学内でグループワークからスタート。
その後、午前中は種村特任教授による講義「事例紹介:遺跡、遺構との共存」を受講。
午後は生川教授の自宅の町家を見学。現在の状態に至るまでの経緯についてレクチャーを受けた後、室内をじっくりと見て回りました。
続いて京都市の学校を訪問し、小梶特任教授が顧問を務めるスケッチ部のメンバーも参加して校舎見学とスケッチを実施しました。
3日目は朝から五条大橋たもとに集合し、「西橋詰町の長屋」へ。
築100年程度の長屋のうち、森重教授の知人が改修された長屋の1棟と、放置され室内が荒廃している1棟を見学しました。
改修後の1棟では、箪笥階段をあがって2階ロフト部分から全体の構造を見渡したり、新設された水回りを利用したり…もう一方の1棟では、軋む床にも怯まず行ったり来たり…異なる状態の2棟を見学することで、改修時にどのような工夫がなされるのか具体的に知ることができ、現代の生活に合った町家の活用方法を身近に感じられたものと思われます。
路地から高瀬川に開ける眺望を愛でた後、バスで東寺へ移動。
月に一度の弘法市で賑わうなか、おやつやお土産の買い物を楽しみました。
昼休憩をはさんで四条烏丸へ移動し、杉本家住宅(重要文化財)や郭巨山町会所(※2021年度の改修工事に髙田教授が従事)など、其処此処に残る町家の外観を観察しながらくろちく 八竹庵(京都市指定有形文化財)へ。
大正15年(1926)に贅を尽くして建てられた和洋折衷の建築を堪能し、広々とした座敷に心地よい秋風が吹き抜ける中、それぞれお気に入りの場所を見つけて寛ぐ様子が見受けられました。
京都を代表する建築の魅力が凝縮された海外交流のプログラムは、双方の建築を志す学生たちにとって素晴らしい体験になったことでしょう。
後期もオンラインミーティングを通してKYOBIとNUSの共同設計演習は続きます。今後もさらに親交を深め、互いに刺激を受けつつ成長していくことが望まれます。