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芸術学部特任教授 宮本貞治先生インタビュー ~「人間国宝」記念~【前編】

このたび、芸術学部特任教授の宮本貞治先生が重要無形文化財(人間国宝)に認定されることになりました。これを記念して、宮本先生と同僚の講師・玉村嘉章先生、工芸領域 木工・彫刻コースの教え子の皆さんにお集まりいただきインタビューを実施しました。

質問1)「人間国宝」に認定されることになった今のお気持ちは?
宮本先生:「こんな私でよかったのかいな」と思ったが、「後継者の育成のためぜひ」ということで素直に喜んでいます。

質問2)周囲の皆さんはどう思われましたか?
玉村先生:木工を志した21年前からお名前はずっと知っていて、宮本先生が大学の教授として来てくださると決定した時は「夢の大学」ができるという思いだった。そこからずっと一緒に仕事をさせていただき、この11年間ですごく沢山の優秀な学生を育てられたのを間近で見られ、よい経験をさせていただいたと思っています。今回、何にも縛られることのない頂点を極められたという感じで、これからどのような作品をつくられるのか益々楽しみで、勉強させていただきたいと思っています。
長谷川諒さん(4年生):会う人みんなから「宮本先生は人間国宝になる」と聞いていたので、今回のニュースを見た時はあまり驚かなかった。「人間国宝」だからという訳ではなく、素晴らしい技術を持っている方に大学で学べることは非常に光栄なことだと思っています。

山本彩恵さん(4年生):身近に教えてもらっている先生が「人間国宝」というすごい存在になられて、単純にすごいなと思う気持ちが一番にあります。技術を身近に教えてもらえ、先生の仕事を間近で見れて学校に来てよかったと、いろんなことを学べていることが幸せだと思います。
松原輝さん(2018年度卒業生):宮本先生の技術はすごいなとつくづく思いますが、技術だけでなく考え方とか形の綺麗さとか感覚的な話でも他の方とは違うすごい柔軟な発想を持っておられて、それを学びたいなと思います。今回「人間国宝」に認定されましたが、いつかなるっていうのは確実に思っていましたし、そんなに驚きはしなかったです。大学を出てからも一番と言えるほどお世話になっているので、本当にうれしかったです。(※註:宮本先生を慕って、歩いて5分ほどの近所に在住)先生以外の方から学ぶ木工はなかったので、先生に憧れて今も木工をしています。いつかは追い越せるぐらいになりたいですね。

質問3)これまでの制作活動の中で、特に印象に残っている作品はありますか?
宮本先生:50歳の時、「日本伝統工芸展」第50回展記念賞をもらった作品(栃拭漆波紋盤》)。栃の玉杢を使った作品で形態は四角、わずかに真ん中が低くなっていて輪が5つほどある。それは水面の上に雨が落ちた時に広がる波紋を、四角の中に丸で表している。同展には30歳の時から毎年出品していて、いつもその年の代表作になるようにと思いながらつくっている。いつも何を出すか悩むが、たまたま梅雨前ぐらい、雨が降っているときにぼうっと庭を見ていたら水盤にぱっと波紋が広がって、「あ、これいけるのちゃうか」とふっと思いついた。一旦これをつくると決まったら、後は迷いがないから手は早い。もう「ぱぱぱっ」と一気にできた。

質問4)本日お持ちいただいた作品の解説をお願いします。
宮本先生:琵琶湖で水上スキーをしていたら、ボートの後にできる波の形からこういう意匠ができていった。こういう盛器に施したり、扉に施したり、飾り棚に…と、いろんな作品に応用していった。これは波の模様、「第50回 日本伝統工芸展」出品作品は雨の波紋、また滝が落ちるイメージでラインを入れたり、みな表現方法は一緒。稜線を立てて漆の艶と光と見る角度でいろんな風に見えるというのが僕の作品の特徴。ここまで行きつくのに第50回展で賞をもらうかなり前から、ああかなこうかなと思って、彫りが深すぎたり浅すぎたり色々試行錯誤して、だんだんこれくらいだったらこれくらいの効果が出るというのが分かってきて第50回展のようになった。滋賀県に住んでなかったら、このような水のシリーズの作品はできていなかったな。

質問5)作品はどのような工程でつくられるのですか?
宮本先生:材料を見て、それを一番生かすのは何がいいかというのをまず考え、その形の中にどういうラインを入れるかということを見ながら考える。それで、僕はいきなり「わ~っ」と削っていく。こういう風なラインを何回も何回もかいていたら、鉋に持ち替えても鉛筆でラインをかくのと同じように手が動いていきます。

質問6)作品づくりにおいて常に心掛けていることは何ですか?
宮本先生:材料を見て、どういう技法で、何をつくったらその材料が一番生きるか常に考えます。注文で何かをつくるには、ただサイズが合うだけのものをつくるのではなく、使われる場所を実際に見て、どういう使い方をされるのかということを考えて木を決めていく。同じ木でも木目をどういう木目にするかということも考えます。

※【後編】に続きます。

京都新聞朝刊(2023.7.22)に宮本教授の記事が掲載されました。
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芸術学部特任教授 宮本貞治先生インタビュー ~「人間国宝」記念~【後編】
  • 芸術学部特任教授 宮本貞治先生インタビュー ~「人間国宝」記念~【前編】