大学院1年次「建築デザイン特別演習Ⅰ」の選択制の設計課題のうち特任教授 岸和郎先生による課題は「大徳寺―小さな美術館―」。「大徳寺の境内というコンテクストを踏まえて、大徳寺の境内、あるいはその近傍に小さな美術館をデザインする。」という趣旨に沿った建築設計に取り組みます。
本課題を選択した学生4名が、岸先生と講師の新谷謙一郎先生・砂川晴彦先生とともに、敷地選び等の実地調査として大徳寺塔頭の真珠庵へ見学に伺いました。
真珠庵は一休宗純禅師を開祖として延徳三年(1491)に創建され、塔頭寺院特有の方丈と呼ばれる建物を中心に、書院「通僊院(つうせんいん)」や庫裏が配され、周囲に庭が整備されています。また通僊院には、江戸時代初期に活躍した茶人・金森宗和好みと伝わる茶室「庭玉軒(ていぎょくけん)」が付属します。
塔頭内は通常非公開ですが、今回は大学院での学びのため特別にご協力いただき、山田宗正住職にご案内いただきました。方丈で山田住職から大徳寺の歴史や禅語について伺うとともに、呈茶のおもてなしをいただき、特別な建築見学に向けて高ぶる気持ちを静めてからスタート。方丈から通僊院、そして庭玉軒へと回りました。
庭玉軒は、屋外の露地から潜りを入ると土間があり、屋内化された露地(内露地)のあることが特徴です。二畳台目という茶室として最小限の空間ながら、内部と外部の空間の繋がりや構成要素の巧みな配置によりゆったりとした空間が生まれています。岸先生はこの庭玉軒の空間について、同じ大徳寺塔頭の孤篷庵にある十二畳の書院風茶室「忘筌(ぼうせん)」と比較して、どちらも秀逸な茶室建築でありながら建築空間的には対極的な作品であり、庭玉軒はセンシュアル、忘筌はロジカルだと説明されました。そして、大徳寺境内をコンテクストとした今回の課題において、その空間の違いを理解することが重要になると。
庭玉軒で床を前にして座るという非日常の空間体験に、学生たちは大きな衝撃を受けた様子でした。岸先生の説明の理解にも繋がる何かを掴み取ったのではないでしょうか。この貴重な体験が「大徳寺―小さな美術館―」という設計課題にどのように反映されるか、期待が膨らみます。