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建築学部 江本弘准教授が「歴史」を担当した『建築をあたらしくする言葉』が発行されました

本日発行の『建築をあたらしくする言葉』(市川紘司・連勇太朗編、TOTO出版、2024年10月)に、建築学部准教授 江本弘先生による論考が掲載されました。

本書は、価値観が大きく変動し、建築や建築家の存在意義も問われる現代において、建築とことばのつながりを見直し、ことばの新陳代謝を促すために編まれた論考集です。33人の気鋭の論客が、39のキーワードについて論じています。

建築史を専門とされる江本先生は「歴史」担当として名を連ね、「近現代建築史の歴史教科書問題」と題する一論を寄せています。
そこでは、本学で担当していた建築学部履修科目「近代建築史」の教科書選定の問題から始めて、「現在から過去にさかのぼる」ユニークな講義の作りかたの種あかしがされています。

この講義のために、江本先生は『テキスト 建築の20世紀』(本田昌昭・末兼伸吾編著、学芸出版社、2009年)を教科書に選定。同書は、21世紀に入って編まれた最新の教科書のなかでも丁寧な注や、著者の生き生きとした歴史観が特徴だと評価します。その上で更に、そこに「あえて書かれなかったこと」が、じつはこの充実した教科書を作り上げるために必要だったのだと指摘。そして江本先生はこの教科書の全体像をつかみやすくするため、その「あえて書かれなかったこと」を中心に講義をつくりました。あわせて、一般的な「歴史」の授業とは逆に、「現在から過去にさかのぼる」という新たな試みもなされました。

我々が知っている「現在」もまた、知らない「過去」からできあがっている……そのような気づきに自然と導かれる講義は、「歴史」という学問の本質に迫るよう学生たちに作用したことでしょう。
そして、教科書さえ疑いながら再構築される真に新しい近現代建築史とは?―現代における「歴史」の位置づけが深掘りされていく本論には、一貫して近現代建築史の再解釈に立ち向かう、鋭い批判眼を持つ建築史家の誠実な姿勢が窺われます。
若い世代へのエールも込められた一論、ぜひご一読ください。

江本弘プロフィール
建築史家。博士(工学)。一級建築士。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程・博士課程修了。専門は近代建築史。『歴史の建設-アメリカ近代建築論壇とラスキン受容』(東京大学出版会、2019年)で第8回東京大学南原繁記念出版賞、2022年度日本建築学会学会賞著作賞を受賞。
〈近著〉
・ 「土井義岳著『空想の建築史-古代ギリシアから現代までをひとつの同時代として』」新刊紹介、『建築史学』第83号、建築史学会、2024年9月
・「めくるめくシブイ建築世界」連載、『京都だより』京都府建築士会、2024年7月~
・‘Shibui Katsura: The Emergence of a Japanese Global Icon 1921–70’(「シブイ・カツラ:国際的アイコンとしての日本建築 桂離宮 」), “JSAH / Journal of the Society of Architectural Historians” (『建築史家協会雑誌』)Volume 82, Society of Architectural Historians, 2023. 3 ※紹介記事

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