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[卒業生インタビュー]大堀相馬焼(福島県)の再建に日々尽力 – 吉田直弘さんと室井早紀さん

馬の絵
ひび割れ
二重焼き

これが福島県浪江町一円で生産される『大堀相馬焼』の特徴。

東日本大震災後、25件あった窯元が10件に減ってしまい、またそれぞれが浪江町から離れてしまいました。
その中のひとつ『松永窯』は浪江町から白河市西郷村に窯を移し、大堀相馬焼の伝統を守りながら、販路の開拓やデザイナーとのコラボレーションによる新商品の開発など、リブランディングブランド再構築にチャレンジされています。その『松永窯』で、伝統工芸学科(現.美術工芸学科)工芸コースで陶芸を学び今春卒業したばかりの吉田直弘さんと室井早紀さんのふたりが技術習得に日々励みながら、地域おこし協力隊として大堀相馬焼のPRも行っています。

この日は、松永窯が主催している大堀相馬焼の夏期インターンシップ説明会のため数か月ぶりに母校に顔を出してくれました。卒業生のふたりも、学生時代にこのインターンシップに参加し、多くのことを経験した後、卒業後の進路として松永窯で活動することを決め、現在に至っています。

<インターンシップ説明会で活動内容を紹介する室井さん>

 

説明会後、すこし時間をもらって懐かしい陶芸実習室でお話を聞きました。

Q1.現在の活動内容は?

吉田さん「ろくろで商品制作をしながら、地域おこし協力隊として大堀相馬焼のPRや地元のフリーペーパーの制作などの活動をしています。」

室井さん「わたしもろくろで商品制作をしながら、インターネット販売の業務を担当しています。受注から梱包、発送までひととおりのことをやらせていただいています。その他にも、地域の公民館で陶芸教室を開いており、その講師として、地域のみなさんと交流しています。」

– 制作技術を学ぶだけでなく、積極的にPR活動をしているおふたり。

吉田さん「(大堀相馬焼は)まだ県内でも知れ渡っていないので、地道にPRを続けていきます。自分が作ったものを気に入って購入していただいたり、お客様からこういうものを作ってほしいとリクエストされたりすることがあります。そういう時は素直にうれしい。」

室井さん「PR活動で、東京ビッグサイトでの展示会に参加しました。バイヤーさんと直接やりとりができたことは良い経験になりました。また、陶芸教室の参加者は年配の方も多いのですが、頑張ってね!と励ましていただいたり、若い人たちが頑張ってるんだから私らも頑張らないと!と言っていただいたり。地元の皆さんはとにかく前向きなんですよね。」

-卒業してからまだ数ヶ月ですが、充実した日々を送っている様子がうかがえました。

 

Q2.KYOBIでの4年間を振り返って

吉田さん「人生が変わりました。浅見先生をはじめ、多くの人にお世話になった。自分が活躍することで恩返しができたらと思っています。卒業してから3か月くらいしか経ってないけど、懐かしいですね。自由にやらせてもらえた。仕事を始めてからは時間をかけて教えてもらうことは難しいが、学生の時はいつでも先生に教えてもらえる環境に居れたことが、振り返ってみるとありがたい」

室井さん「京都は陶芸の産地としても有名。東山に移ってからは、近くの陶器のお店や展示会を巡っていました。授業ではろくろ成形や絵付けなど実習はもちろん、座学での知識も得ることができた。学生時代に多くのものを吸収し、それが今に活かされています。」

吉田さん「園部キャンパスでの経験も良い刺激になりました。すぐ近くでTASK(京都伝統工芸大学校)の陶芸専攻が実習に打ち込んでいる姿を見て、ライバル心が芽生えました。」

室井さん「私は対外的な活動が印象に残っています。公募展や高島屋さんでの販売、MurMur Coffeeで器を使ってもらったり、自分が作った商品のPRができたのが良かった。反省や失敗もあったけど、それが今に活かせています。失敗が多かったんですけどね(笑)。」

吉田さん「そうそう、たくさん失敗した(笑)。たくさん失敗した分、たくさん学べた。」

– 学生の頃、松永窯さんのインターンシップに参加したふたり。
インターンシップに参加してどうだったのでしょうか。

吉田さん「松永窯のインターンシップに参加するまでは、卒業の進路が定まらず、制作をするにも目的があいまいな部分がありました。インターンシップに参加してみたら、自分たちが食べていくには一日どれくらいろくろを回さないといけないのか、どうやって商品を売らないといけないのかなど、実践的な経験ができました。現場を知ることで、その後の目標が具体的になりました。」

室井さん「家族経営の窯元さんにお世話になりました。福島の県民性なのか、温かく迎えていただき、安心してインターンシップに参加できました。学校では基礎を中心に学んでいた時期なので、『商品を作って売る』という現場を経験できたのが大きいですね。陶芸家って山に籠ってひたすら土をいじっている仙人みたいなイメージがあるんですけど(笑)、人との関わりが必要で、仙人みたいな陶芸家になったらダメだなと痛感しました。」

<学生時代の吉田さん>

Q3.後輩へのメッセージ

吉田さん「就職は関西でと考えていたけど、エリアを絞ると面白い仕事が見つからないと思って、インターンシップに参加。その結果、視野が一気に広がった。みんなも外に目を向けて、面白いことを見つけてほしい。それと仕事を始めてからは失敗できないので、学生の間にたくさん失敗をしてほしい。そして、失敗を恐れずにプロジェクト等にもチャレンジしていってほしい。」

室井さん「京都にはいいものがたくさんある。けど、他の産地にもいいものがたくさんある。それを調べるだけじゃなく、自分で足を運んでその場の仕事の姿を見てほしい。大学時代は一生の中でも一番自由な時期(お金は、、、あんまり無いかもですが、、、)。自分が興味を持ったものには徹底的に突き詰めていってほしい。」

大堀相馬焼の抱える問題はまだまだたくさんあります。
話を聞いて一番心配したのが、大堀相馬焼のろくろ職人さんが一人しかいないこと。
もしも自分たちが継いでいくことになれば、将来は自分たちだけになってしまうかもしれない、、、と話す吉田さん。
だからこそ、大堀相馬焼の技術を学び、良さを広め、次の世代へと継いでいけるように頑張っていこうとも。

自分たちが参加して多くのものを得た夏期インターンシップに後輩たちが参加してくれるのを楽しみにしています。

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